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共通ケース

株式会社さくら:売上100億円から1兆円へ

難易度 全レベル所要時間約12分

このサイトのすべての記事・Q&A・シミュレーションは、架空企業「さくら」の数字を使います。同じ会社が成長していく設定なので、「会社が大きくなると財務の仕事はどう変わるのか」を一つの物語として学べます。登場する企業・人物・数値はすべて架空です。

A 株式会社さくら
単体・100億円
→B さくらグループ
国内10社・1,000億円
→C さくらグローバル
国内外30社・5,000億円
→D さくらホールディングス
上場・1兆円
会社の成長に合わせて、出納→資金繰り→財務→グループ財務→財務戦略へと必要な能力が高度化する
ケースA

株式会社さくら(単体企業)

0123
売上高
100億円
月商
約8億円
従業員
300人
銀行口座
3行・5口座
有利子負債
20億円
経理財務
4人
経理課の中に出納・資金担当

この段階の財務の仕事

  • 出納:毎朝インターネットバンキングで残高確認。総合振込は月2回、給与振込は月1回。振込データ作成者と承認者を分ける(職務分掌)。
  • 入金消込:売掛金の入金を取引先ごとに照合。振込名義が違う、金額が端数違いなど、月に数十件の不一致を調べる。
  • 資金繰り:経理課長が月次資金繰り表をエクセルで作成。賞与月と納税月に残高が薄くなる。
  • 借入:メインバンクからの長期借入と、賞与資金の短期借入。当座貸越枠1億円。

この段階で起きる典型的な問題

ケースA

1つの取引を、最初から最後まで追ってみる

12

ここまでの各記事は、それぞれ別の場面を説明してきました。ここでは、さくらが毎月行っている総合振込(120社へ合計約2億3,000万円)のうち、仕入先「〇〇商事」への支払い300万円という1つの取引だけを取り出し、請求から資金繰り表への反映まで、実際にどうつながっているかを順番に見ます。

  1. 請求書の確認:仕入先「〇〇商事」から、納品済みの商品300万円分の請求書が届く。これは、毎月の総合振込(120社・合計約2億3,000万円)に含まれる1件。
  2. 支払承認:300万円は支払承認の基準(100万円以上1,000万円未満=経理部長が承認)にあたるため、経理部長が承認する。振込データを作成した担当者と、承認する経理部長は別の人(職務分掌)。
  3. 振込の実行:月2回の総合振込日に、他の119社分とまとめて銀行へ振込データを送信し、実行される。
  4. 銀行明細への反映:振込実行日、さくらの銀行口座から300万円が出金として記帳される。
  5. 仕訳:会計システムに仕訳の基本のとおり記帳する:借方 買掛金300万円/貸方 現金預金300万円。
  6. 銀行残高照合:月末の銀行残高照合で、この300万円の出金が銀行の実際の残高と、帳簿上の現金預金残高の両方に、正しく反映されていることを確認する。
  7. 資金繰り表への反映:翌月の資金繰り表を作るときは、この300万円は「実績」としてすでに確定した支払いであり、来月以降の予測には含めない。総合振込の合計額(約2億3,000万円)として、実績欄に記録される。

「1件の請求書」が、承認・振込・銀行記帳・仕訳・残高照合・資金繰り表という複数の場面を経て、最終的に「会社の資金がいくら動いたか」という1つの事実に集約されていく流れが分かります。

ケースB

さくらグループ(国内子会社10社)

45
売上高
1,000億円
グループ会社
親+国内10社
銀行口座
8行・60口座
有利子負債(連結)
200億円
うち子会社の個別借入80億円
余剰現金(子会社合計)
50億円
一方で借りている子会社もある
経理財務
親20人+各社2〜3人

この段階で必要になる能力

  • グループ資金の可視化:子会社ごとに口座があり、親会社は月末にしか各社の残高を把握できない。まず「今日の連結現金残高」を毎日見えるようにする。
  • 資金集中(キャッシュプーリング):余剰現金のある子会社の資金を親会社に集め、不足する子会社へ貸し付ける。外部借入を減らし、支払利息を削減する。実態はグループ会社間貸借なので、利率の設定と仕訳、税務上の妥当性を経理が確認する。
  • 支払代行・相殺決済:グループ内取引の支払いを親会社が代行し、債権債務を相殺して差額決済にする。振込手数料と手間を減らす。
  • CMSの導入:銀行のCMSを使い、自動資金移動・グループ内貸借の利息計算・残高の一元表示を実現する。導入時に経理が確認すべきことは「仕訳データはどう出るか」「決算日の残高はどう証明するか」「子会社の承認権限はどう残すか」。

典型的な問題

  • ある子会社が銀行から年1.5%で借りている一方、別の子会社は年0.01%で預けている。グループ全体で見れば無駄な利息を払っている。
  • 子会社の資金を親会社に集めたところ、子会社の社長から「うちの金を勝手に使うな」と反発される。グループ財務統制の方針と、子会社への説明が必要になる。
ケースC

さくらグローバル(国内外30社)

56
売上高
5,000億円
海外比率40%
グループ会社
国内15社+海外15社
通貨
6通貨
有利子負債(連結)
800億円
銀行借入+社債
財務部
独立部門・30人
経理部と分離

この段階で必要になる能力

  • 財務部門の設計:経理部(記録・決算)と財務部(資金・調達・リスク)を分ける。何を分け、何を共有するかを決める。
  • 財務管理システム(TMS):借入・社債・為替予約・グループ内貸借・銀行口座を一元管理し、会計システムと連携する。CMSが「お金を集める仕組み」なら、TMSは「財務全体を管理する仕組み」。
  • 為替リスク管理:海外子会社の外貨建て取引を集計し、為替予約でヘッジする方針を作る。
  • 資金調達の多様化:銀行借入に加えて社債とコマーシャルペーパーを使う。既存有利子負債(Existing Debt)の一覧と返済期限の分散を管理する。
  • 銀行口座統制:海外を含む200口座の開設・閉鎖・権限を本社が統制する。不正防止の要。
  • 手元資金水準の方針:財務部長が「連結で月商の何か月分を持つか」「コミットメントラインをいくら確保するか」を決め、経営会議に報告する。
ケースD

さくらホールディングス(上場持株会社)

7
売上高
1兆円
EBITDA
1,200億円
現金預金
500億円
ほかに有価証券300億円
有利子負債
2,000億円
格付
A格(設定)
株主資本
4,000億円

CFOが判断すること

  • 資金の最適配分:営業キャッシュフローを、成長投資・M&A・借入返済・株主還元にどう配分するか。
  • 資本構成:借入と株主資本の比率をどこに置くか。資本コストを下げつつ、格付を維持する。
  • 手元現金の水準:株主から「現金が多すぎる」と言われたとき、何を根拠に答えるか。→ CFOルーム:現金500億円は多すぎるのか?
  • 金融危機への備え:売上30%減、大口取引先の倒産、金利上昇、融資縮小が同時に起きたとき、最初の24時間で何をするか。
  • 取締役会・CEOとの意思決定:財務の数字を、経営の言葉に翻訳して伝える。

成長とともに変わるもの・変わらないもの

A 単体B 国内グループC グローバルD 上場持株会社
資金繰りの単位1社・月次連結・日次連結・通貨別・日次連結・戦略的配分
主な調達手段銀行借入・当座貸越銀行借入・グループ内貸借銀行・社債・CP社債・CP・株式・M&Aファイナンス
主なリスク資金不足子会社の資金の見えなさ為替・金利・海外規制資本市場・格付・危機対応
主なシステムインターネットバンキング+エクセルCMSCMS+TMS+会計連携TMS+経営ダッシュボード
変わらないこと支払日に現金が足りなければ会社は止まる。出納の正確さと職務分掌はどの段階でも土台。
次に学ぶ
資金繰りとは何か(ケースAの数字を使った代表記事)
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最終更新日:2026年9月5日|本ページの企業・数値はすべて架空の設定です。