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Q&A|1. キャッシュマネジメント基礎

利益と現金は、
別のものです。

売上は「売った日」に、現金は「入金された日」に動きます。

Q. 黒字なのに、なぜ会社のお金がなくなるのですか?

難易度レベル0 入門所要時間約7分前提知識なし
A. 一言でいうと

利益は「売った・使った」を記録した計算結果で、現金は「実際に入った・出た」お金です。この2つの差を生むのが、売掛金・在庫・設備投資・借入返済の4つです。

お金がなくなる4つの理由

理由 1売掛金売れたが、まだ入金されていない。
理由 2在庫お金が商品に変わっている。
理由 3設備投資利益とは別に、現金が一度に出ていく。
理由 4借入返済元本の返済は費用ではないが、現金は減る。

まず、利益と現金は何が違うのか

損益計算書の利益は、「商品を納品した日」に売上を、「材料を使った日」に費用を記録して計算します。お金が入った日・出た日ではありません。一方、現金は銀行口座に実際に入金・出金された日にしか動きません。

3月10日納品→売上1,000万円を計上→3月末決算:利益に含まれる→5月末入金:ここで初めて現金が増える
3月の決算では利益が出ているが、3月末の口座にはまだ1,000万円は入っていない。

4つの理由を、一つずつ

株式会社さくら(売上高100億円)のある年度。利益は5億円でした。ところが現金は3億円減りました。

理由1:売掛金が増えた(売ったのに、まだもらっていない)

売上が伸びて、売掛金が前年より4億円増えました。売上には計上されて利益になっていますが、4億円分はまだ口座に入っていません。

理由2:在庫が増えた(買ったのに、まだ売っていない)

受注増に備えて材料と製品の在庫を2億円増やしました。在庫は「買ったときに費用にならず、売れたときに費用になる」ため、利益は減りません。しかし現金は買った時点で出ていきます。

理由3:設備投資をした(費用は少しずつ、支払いは一度に)

5億円の生産設備を購入しました。設備は何年も使うので、費用は減価償却費として毎年少しずつ計上されます。この年の減価償却費は3億円ですが、支払った現金は5億円です。

理由4:借入金を返した(費用にならないが、現金は減る)

銀行からの借入金を1億円返済しました。借りたものを返しただけなので費用にはならず、利益には影響しません。しかし現金は1億円減ります。

数字で見る:利益5億円が、現金−3億円になるまで

当期の利益
+5.0億円
減価償却費を足し戻す
費用だが現金は出ていない
+3.0億円
売掛金の増加
−4.0億円
在庫の増加
−2.0億円
買掛金の増加
買ったのにまだ払っていない
+1.0億円
設備投資の支払い
−5.0億円
借入金の返済
−1.0億円
現金の増減
−3.0億円

この並べ方は、決算書の一つであるキャッシュフロー計算書の形そのものです。「利益から出発して、現金との差を調整していく」この形を覚えると、決算書が読めるようになります。

キャッシュフロー計算書の形で見る営業・投資・財務の3区分
項目金額(億円)理由との対応
当期の利益+5.0出発点
減価償却費を足し戻す+3.0理由3の前半
売掛金の増加−4.0理由1
在庫の増加−2.0理由2
買掛金の増加+1.0逆に現金を助ける
営業活動によるキャッシュフロー(本業で生んだ現金)+3.0
設備投資の支払い−5.0理由3の後半
投資活動によるキャッシュフロー−5.0
借入金の返済−1.0理由4
財務活動によるキャッシュフロー−1.0
現金の増減−3.0利益+5億円なのに現金は−3億円

学習用に簡略化しています。実際のキャッシュフロー計算書(間接法)は税引前利益から出発し、法人税の支払額や利息の受払いなども調整します。

3つの視点で見る

経理レベル0〜2

増えた売掛金と在庫は「健全」か。

  • 売掛金の増加は売上増か、回収遅れかを取引先ごとの期日で確認する。
  • 在庫の増加は計画的な積み増しか、売れ残りかを確認する。
財務レベル3〜6

設備投資を、なぜ手元現金で払ったのか。

  • 設備投資5億円を長期借入で賄えば、現金は減らなかった。
  • 売上成長で運転資本が増え続けるなら、融資枠や長期借入で構造的に手当てする。
CFOレベル7

この現金減少は「計画どおり」か。

  • 成長投資期なら利益5億円・現金−3億円は正常なこともある。問題は事前に計画していたかどうか。
  • 投資した5億円が将来どれだけ現金を生むかを説明できるか。
仕訳で確認する現金が動く仕訳と、動かない仕訳
以下は典型的な例です。実際の会計処理は契約内容・取引実態・適用する会計基準等によって異なる場合があります。
売上を計上したとき(現金は動かない)
借方金額貸方金額
売掛金1,000万円売上高1,000万円
利益は増えるが、現金預金は増えない。
2か月後に入金されたとき(利益は動かない)
借方金額貸方金額
現金預金1,000万円売掛金1,000万円
ここで初めて現金が増える。損益計算書には何も起きない。
借入金を返済したとき(費用にならない)
借方金額貸方金額
借入金1億円現金預金1億円
利息の支払い(支払利息/現金預金)だけが費用になる。元本の返済は費用ではない。

では、どうすればいいのか

  1. 資金繰り表を作る:利益ではなく現金の予定を月ごと・週ごとに見える化する。→ 資金繰りとは何か
  2. 大きな支払いは資金の種類を合わせる:設備投資は長期借入で、運転資本の増加は融資枠で。
  3. 回収を早く、在庫を少なく:営業・購買を巻き込む全社の仕事。
  4. いざというときの備え:当座貸越や融資枠を、困る前に用意する。→ シミュレーション

よくある間違い

  • 「利益が出ているから配当や賞与を増やして大丈夫」と、現金を見ずに決めてしまう。
  • 「減価償却費は現金が出ない費用だから気にしなくていい」と考える。設備を買った年には大きな現金が出ている。
  • 「借入返済は費用ではないから資金繰りに影響しない」と考える。費用ではないが、現金は確実に減る。
次に学ぶ
資金繰りとは何か
→
情報源
最終更新日:2026年9月5日|数値は架空企業の設定値です。