シミュレーション|5. 資金繰り・資金予測
残高3,000万円。
明日の支払いは5,000万円。
あなたは株式会社さくらの資金担当。夕方、翌日の支払予定を確認して、足りないことに気づきました。
明日の支払い資金が足りない
今日の銀行残高
3,000万円
−
明日の支払い(仕入代金)
5,000万円
=
不足額
▲2,000万円
翌週には大口取引先から8,000万円の入金が確定しています。足りないのは「明日から翌週まで」の2,000万円だけです。
この仕入先からは30日前に商品を受領しており、契約上の支払期日は受領後30日、つまりちょうど「明日」です。延期を選ぶと、実際に支払うのは翌週(受領後37日目)になります。
対応策を選んでください
前提を変えてみる枠や定期預金の有無で結果が変わります
本当の正解は「明日」より前にある
4つの選択肢はどれも「今日できること」です。最善の対応は、この状況を3週間前に予見し、当座貸越枠や融資枠を用意しておくことでした。13週間資金繰り表があれば、翌週の入金と明日の支払いのズレは事前に分かります。資金担当の腕は、危機の日の対応力ではなく、危機の日を作らない予見力で決まります。
3つの視点で見る
経理レベル0〜2
明日、支払いを止めないこと。
使える手段を確認し、上長の承認を得て実行する。取引先への連絡は記録に残す。
財務レベル3〜6
なぜ枠がなかったのか、あるなら使うべきか。
一時的で少額の不足には、短期で低コストの手段を使う。担保に入った預金は手元資金に数えない。
CFOレベル7
なぜ前日まで分からなかったのか。
2,000万円の不足そのものより、資金予測の仕組みを問題にする。
経理・財務ではどう考えるか一時的な資金不足を10の観点で
現金
不足は2,000万円・1週間だけ。「一時的」で「小さい」不足には、短期で低コストの手段を使う。
貸借対照表
当座貸越→短期借入金が増える。定期預金解約→定期預金から普通預金への振替(資産内の移動)。早期回収→売掛金が減り現金が増える。支払延期→買掛金が残る。
損益計算書
当座貸越の利息は支払利息。売上割引は収益認識の会計基準では売上高から控除する。支払延期の遅延損害金があれば営業外費用。
キャッシュフロー計算書
当座貸越は財務活動(短期借入)。定期預金の解約は、預入期間3か月超の定期なら投資活動(現金同等物に含まれないため)。早期回収は営業活動。
仕訳
選択肢ごとの結果に表示。
決算
決算日をまたぐ当座貸越残高は短期借入金として表示。担保に入っている定期預金は注記の対象。
税務
支払利息・遅延損害金は損金。売上割引は収益のマイナス。証憑を残す。
内部統制
当座貸越の利用や支払延期の交渉は、資金担当の一存でなく上長の承認を得る。取引先への連絡は記録に残す。
システム
インターネットバンキングの残高照会と支払予定の突合を毎日行っていれば、前日の夕方ではなく数週間前に気づけた。
CFO
資金予測の仕組みを直す。当座貸越枠・融資枠の設計を見直す。
次に学ぶ
用語:既存有利子負債(Existing Debt)
情報源
- 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(発行:企業会計基準委員会(ASBJ)/asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/20180330_02.pdf/2026年9月確認)-売上割引を変動対価として売上高から控除する取扱いの根拠
- 企業会計基準委員会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(発行:企業会計審議会/asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=85/2026年9月確認)-現金同等物の範囲(3か月超の定期預金を含めない根拠)
- 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(発行:公正取引委員会/jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html/2026年9月確認、2026年1月1日施行):対象取引では、支払期日は受領後60日以内で定めなければならず(60日はあくまで合意できる期日の上限)、いったん定めた支払期日を過ぎての支払いはそれ自体が違反になり得ます。手形による支払いも一律禁止、電子記録債権等も期日までの現金化が原則必要です。対象取引の判定・詳細は一次資料または専門家への確認が必要です。
- 当座貸越には、残高不足分が自動的に補填されるタイプと、借入のたびに個別の申込みが必要なタイプがある(詳しくは当座貸越と融資枠の基本)。本シミュレーションは、さくらの契約が自動実行型であることを前提にしている。
最終更新日:2026年9月5日|金利・割引率は例示です。