「記録する人」と、
「動かす人」を分ける。
組織が大きくなるほど、役割の分離が力になります。
財務部門の組織設計
会社が小さいうちは、経理担当者がお金の記録も、支払いも、資金繰りの判断も、ひとりで行うことがあります。しかしさくらグローバル(売上高5,000億円、国内外30社)のような規模になると、「決算を正確に締める」という仕事と、「資金を調達し、リスクを管理する」という仕事は、性質が違いすぎて、同じ組織のままでは両方とも弱くなります。そこで経理部(記録・決算)と財務部(資金・調達・リスク)を分けて設計します。
なぜ分けるのか:2つの仕事は目線が違う
経理の仕事は、すでに起きた取引を、正確に・期限内に・基準どおりに記録することです。過去を正確に映す仕事といえます。一方、財務の仕事は、これから資金がいつ・いくら必要になるかを予測し、調達し、リスクに備えることです。未来に向けて判断する仕事といえます。どちらも重要ですが、求められる思考のスピードや正確さの種類が異なるため、規模が大きくなるほど、専任の担当者・専任の部門に分けたほうが、それぞれの仕事の質が上がります。
何を分け、何を共有するか
役割を分けるといっても、完全に別々に動くわけではありません。たとえば、財務部が銀行から借入を実行すると、その借入金の元本・利息は、必ず経理部が仕訳として記録します。逆に、経理部が把握している売掛金の回収予定は、財務部が資金繰りを予測するための材料になります。意思決定と実務(調達・リスク管理)は財務部、記録と報告(仕訳・決算・税務)は経理部という線引きが基本ですが、日々の情報はお互いに共有し続ける必要があります。
3つの立場から見る組織設計
分けることで、決算の正確さは保てるか。
財務部が実行した取引の情報が、遅れず・漏れず経理部に伝わる仕組みがあれば、決算の正確さはむしろ高まる。情報の連携が途切れることが最大のリスク。
分けることで、資金の判断は速くなるか。
決算業務から切り離されることで、市場の変化や資金需要に対して、より速く・専門的に判断できるようになる。
組織全体として、けん制は効いているか。
資金を動かす部門(財務)と、それを記録・検証する部門(経理)が分かれていること自体が、不正防止のための内部統制になる。
もう少し詳しく:小さい会社ではどうするか
従業員が数十人規模の会社では、経理部と財務部を別々の部門にするほどの人数がいないことも多くあります。その場合でも、「記録する人」と「支払いを実行する人・承認する人」を分けるという職務分掌の考え方(レベル1)は、組織図とは別に適用できます。組織を分けるかどうかは規模の問題ですが、役割・権限を分けるという考え方自体は、会社の規模にかかわらず重要です。
確認問題
- 一般的な財務部門・経理部門の組織設計に関する解説