借りたあとも、
守るべき約束があります。
破ると、一括返済を求められることもあります。
財務制限条項(コベナンツ)とは何か
借入契約には、「この財務状態を守り続けてください」という約束が付いていることがあります。この約束を、日本語で財務制限条項、英語でコベナンツ(Covenant)と呼びます。破ると、期限より前に一括返済を求められることがあります。
「借りて終わり」ではない
銀行借入の基本と交渉で見たとおり、借入は返済計画を確認したうえで実行されます。しかし銀行が心配しているのは、返済開始時点の財務状態だけではありません。返済が終わるまでの間、会社の財務状態が悪化しないかも心配しています。そこで、契約の中に「守るべき約束」を盛り込みます。
さくらの借入契約にある約束(例)
| 約束の内容 | 意味 |
|---|---|
| 2期連続の経常赤字にならないこと | 本業の収益力が大きく悪化していないかの目安 |
| 純資産を前期末の75%以上に保つこと | 会社の体力(自己資本)が急に減っていないかの目安 |
これらの約束を、日本語でも英語でも同じ意味の言葉として、財務制限条項、あるいは英語のままコベナンツ(Covenant)と呼びます。契約書は英語で書かれることも多く、実務では英語の呼び方もあわせて覚えておく必要があります。
約束を破ったら、どうなるか
財務制限条項に抵触すると、契約上、銀行は残っている借入金の一括返済を求める権利を持ちます。実際にすぐ一括返済を求められるとは限りませんが、抵触した時点で銀行との交渉が必要になります。利益と現金の違いで学んだとおり、財務状態の悪化に早く気づき、銀行に早めに相談することが重要です。
会計上の扱いへの影響
財務制限条項に抵触すると、本来は長期の借入金であっても、1年基準の考え方に基づき、貸借対照表上は流動負債(1年以内に返済すべきもの)に分類し直す論点が生じることがあります。詳しくは既存有利子負債(Existing Debt)の仕訳への影響で扱っています。
実務資料ではこう出てくる英語だけを見ても分かるように
- 「Covenant」→ 財務制限条項。契約書は英語で"Financial Covenants"として条項化されることが多い。
- 「Covenant Breach / in breach of covenant」→ 財務制限条項への抵触。"The company is in breach of its covenant." → 会社は財務制限条項に抵触している。
- 「Waiver」→ 抵触した際、銀行が一時的に権利行使をしないことに同意する「特別な承諾」。
演習|英文の財務制限条項を読み解く(演習専用設定)
実際の借入契約書は英語で書かれることも多くあります。以下は、この記事で見た「純資産を前期末の75%以上に保つ」という約束を、契約書ふうの英文にした教材用のオリジナル文です(実在する契約書の転載ではありません)。
重要語分解:
- Borrower=借り手(会社)
- Net Assets=純資産
- preceding fiscal year=前期(直前の事業年度)
- Event of Default=期限の利益喪失事由(契約違反により、期限前の返済請求ができるようになる事由)
- accelerate repayment=期限前に一括返済を請求すること
【数値判断】ある会社の前期末純資産は100億円でした。
確認問題
- 一般的な借入契約における財務制限条項(コベナンツ)の考え方に関する解説