借入を増やせば増やすほど、
得とは限らない。
資本コストと格付、両方から見て決めます。
資本構成の最適化
レベル6では、借入と株主資本の比率という資本構成の基礎を学びました。CFOは、この比率を「資本コスト(WACC)を最小化しつつ、格付を維持できる範囲」で最適化することを目指します。借入を増やすほどコストは下がりやすい一方、増やしすぎるとリスクが上がるという、両方向の力が働きます。
借入を増やすと、資本コストは下がりやすい
借入のコストは、一般に株主資本のコストより低く、しかも利息は税務上の費用になります。そのため、借入の比率を増やすほど、会社全体の資本コスト(WACC)は下がりやすくなります。この効果だけを見ると、「借入をできるだけ増やしたほうが得」という結論になりそうです。
しかし、増やしすぎると別のコストが発生する
借入が増えすぎると、返済負担が重くなり、格付機関は会社の信用力を引き下げます(レベル6「格付戦略」)。格付が下がると、新たな借入や社債の金利が上がり、財務制限条項(コベナンツ)に抵触するリスクも高まります。つまり、借入を増やしすぎることは、表面上の資本コストを下げても、財務の安定性というコストを増やすことになります。
借入比率を上げるほど、良くなるもの
- 資本コスト(WACC)が下がりやすい(利息の節税効果)。
- 株主資本を薄めずに資金を確保できる。
借入比率を上げるほど、悪くなるもの
- 返済負担が重くなり、財務の柔軟性が下がる。
- 格付が下がりやすく、新規調達の条件が厳しくなる。
- 業績悪化時に、財務制限条項(コベナンツ)に抵触するリスクが高まる。
3つの立場から見る資本構成の最適化
利息費用・純資産の変動を正確に開示できるか。
資本構成の変更(増資・借入)は、決算書・注記に正確に反映する必要がある。
目標の格付水準の範囲内に収まっているか。
財務部長が管理する格付戦略(レベル6)と整合する範囲で、借入比率を調整する。
資本コストと財務の安定性、両方が納得できる水準か。
資本コストの最小化だけを追い求めず、危機時にも耐えられる財務の安定性とのバランスで、最終的な比率を決める。
もう少し詳しく:「最適な比率」は業種・状況で変わる
業績が安定している業種(インフラなど)は、借入への依存度を高めても倒産リスクが低いため、借入比率を高めに設定できます。一方、業績の変動が大きい業種は、借入を増やしすぎると、業績悪化時に資金繰りが行き詰まりやすくなります。「唯一の正解」があるのではなく、自社の事業の安定性に応じて、資本構成の最適な水準は変わります。
確認問題
- 一般的な資本構成の最適化(最適資本構成論)に関する解説