学習記事|7. CFO|13. CFO・財務戦略・企業価値

使い道のないお金は、
持ち続けない。

還元は「余った」からではなく、「選んだ」から行います。

株主還元の考え方

難易度レベル7 CFO 所要時間5分 前提知識資本構成の最適化
⏱ 30秒で理解

会社が生んだ利益・余剰資金の使い道は、成長投資・M&A・借入返済だけではありません。投資しても資本コストを上回るROICを生む見込みが乏しい資金は、配当や自社株買いを通じて株主に返す、という選択肢も含めて比較します。これを株主還元といいます。

なぜ、使わずに返すという選択肢があるのか

前の記事で見たとおり、ROICが資本コストを下回る投資は、会社の価値を減らします。もし社内に、資本コストを上回る利益を生む投資機会が十分になければ、その資金を無理に投資に回すより、株主に還元したほうが、株主にとって合理的な場合があります。株主は、受け取った資金を自分自身でより良い投資先に振り向けることができるからです。

配当と自社株買い、何が違うのか

配当
株主に現金を直接分配する。配当性向(利益に対する配当の割合)で水準を示す。一度上げると下げにくく、安定性が期待される。
自社株買い
市場から自社株式を取得する。取得した株式は「自己株式」として保有され、純資産の控除項目になる。発行済株式総数そのものはこの時点では変わらないが、EPS(1株当たり利益)の計算では自己株式を差し引いた株式数を分母にするため、EPSが増える効果がある。発行済株式総数を実際に減らすには、取得した自己株式を「消却」する、別の手続きが必要。配当より機動的に増減しやすい。

3つの立場から見る株主還元

経理

配当・自社株買いの会計処理は適切か。

配当は利益剰余金の減少、自社株買いは自己株式として純資産の控除項目として処理する。

財務

還元後も、必要な手元資金は確保できているか。

還元は、必要手元資金(レベル5)を確保した上での、余剰資金の使い道の一つとして検討する。

CFO

投資と還元、どちらが企業価値を高めるか。

投資機会のROICと資本コストを比較し、還元が投資より合理的だと判断できる根拠を、株主に説明できる形で持つ。

もう少し詳しく:還元は「投資機会がない」ことの表明でもある

株主還元を積極的に行うことは、悪いことではありませんが、同時に「今、資本コストを上回る投資機会を十分に持っていない」というメッセージにもなりえます。CFOは、還元の方針を発表する際、単に「余ったから返す」のではなく、「投資機会を精査した上で、還元のほうが株主価値を高めると判断した」という規律を示すことが重要です。

確認問題

問:余剰資金を、投資ではなく株主還元に回すことが合理的なのは、どのような状況ですか?
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情報源
  • 企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(発行:企業会計基準委員会(ASBJ)/asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=28/2026年9月確認)-自己株式の取得は発行済株式数を直接減らさず、消却によって初めて減少するという整理の根拠
  • 配当政策・自社株買いの経営判断としての考え方は、特定の一次資料に基づく解説ではなく、一般的なコーポレートファイナンスの解説です。
最終更新日:2026年9月5日|本記事の数値は架空企業「さくらホールディングス」の設定値です。