1件の借入ではなく、
調達の組み合わせを設計する。
どこから・どうやって調達するかは、戦略です。
資金調達戦略の立案
レベル3では、銀行借入・社債・コマーシャルペーパーといった個別の調達手段の仕組みを学びました。財務部長の仕事は、それぞれの手段を「今回はどれを使うか」ではなく、「今後3〜5年の事業計画に対して、どの手段を・どの比率で・どの銀行から組み合わせるか」という調達戦略として設計することです。
なぜ「組み合わせ」を考えるのか
1つの銀行からだけ借りていると、その銀行の融資方針が変わったときに、資金調達全体が止まるリスクがあります。逆に、社債やコマーシャルペーパーだけに頼ると、市場の状況が悪化したときに発行できなくなるリスクがあります。銀行借入・社債・コマーシャルペーパー・融資枠を組み合わせることで、どれか1つの手段が使えなくなっても、他の手段で資金を確保できる状態を作ります。
さくらグローバルの有利子負債800億円の内訳(設定値)。ここでの「CP・融資枠の利用残高100億円」は、実際にコマーシャルペーパーを発行済み、または融資枠を借り入れ済みで、返済義務として残っている金額だけを指します。融資枠のうち、まだ借りていない部分(未使用枠)は、借金ではないため有利子負債には含みません。特定の手段・特定の銀行に集中しすぎないよう配分している。
特定の銀行への依存度も見る
手段の分散だけでなく、「どの銀行から、いくら借りているか」という取引銀行の分散も重要です。メインバンク1行に依存度が偏りすぎると、その銀行の方針転換の影響を強く受けます。一方で、取引銀行を増やしすぎると、条件交渉や日々のやり取りの手間が増えます。適切な行数のバランスをとることも、調達戦略の一部です。この視点は、発展記事「銀行との関係管理」でさらに扱います。
3つの立場から見る調達戦略
返済・利払いのスケジュールを正しく反映できるか。
複数の調達手段を組み合わせるほど、返済・利払いのスケジュールが複雑になる。決算書への正確な反映が求められる。
将来の資金需要に、機動的に対応できるか。
事業計画上の資金需要(設備投資・M&A等)に対し、どの手段をどのタイミングで使うかを事前に計画しておく。
コストと安定性のバランスは取れているか。
コストが低い手段だけを追い求めると、いざというときの調達の安定性を損なうことがある。両者のバランスを経営として判断する。
2つの調達案を比較する
さくらグローバルが、新たに200億円の資金調達を検討しています。2つの案が候補に挙がりました。
| 案 | 内容 |
|---|---|
| 案A:メインバンクからの追加借入 | 金利0.9%、実行まで2週間。ただし、すでに借入400億円のうち一定割合を占めるメインバンク1行への依存が、さらに高まる。 |
| 案B:社債の追加発行 | 金利1.3%、発行まで市場での手続きに約3か月。投資家層が広がり、銀行への依存度はむしろ下がる。 |
演習|資金調達戦略シートを組み立てる(演習専用設定)
架空の会社「C社」(今後3年で300億円の設備投資を計画)向けの資金調達戦略シートを、以下の選択肢から組み立ててください。自由記述ではなく、選択式で成果物を組み立てる演習です。
確認問題
- 一般的な資金調達の分散・調達戦略に関する解説