振込以外にも、
支払いを先延ばしする方法があります。
紙の約束から、電子データの約束へ。
手形・電子記録債権とは何か(発展)
代金の支払いを、指定した期日まで先延ばしする「約束の紙」を手形、それを電子データに置き換えたものを電子記録債権(でんさい)と呼びます。買掛金と同じく、支払いを先延ばしする方法の一種です。
買掛金との違い
レベル0で見た買掛金は、「代金は来月払う」という口約束(契約上の合意)でした。手形は、その約束を「いつ、いくら払う」と紙に書いて相手に渡す方法です。約束の内容を書面にすることで、より確実な支払いの証拠になります。
以下は、手形の基本的な仕組みを示す一般的な例です。「3か月後」という期間は、対象取引(後述)には適用できません。対象取引では、支払期日は受領後60日以内で定める必要があり、そもそも手形を渡すこと自体が認められません。この例は、対象外取引、または2026年のルール施行前の一般的な商慣行を示すものとして読んでください。
紙から、電子データへ
手形は紙でやり取りするため、紛失や盗難のリスク、印紙税の負担などがあります。これを電子データに置き換えたのが電子記録債権(でんさい)です。仕組みは手形とほぼ同じですが、紙のやり取りが不要になります。近年は、手形から電子記録債権への移行が進んでいます。
2026年からのルール:手形が使えなくなる取引がある
2026年1月1日から、「中小受託取引適正化法(取適法。旧・下請代金支払遅延等防止法=下請法を改正したもの)」の対象になる取引では、ルールが変わりました。対象になりやすいのは、資本金や従業員数の大きい会社(委託側)が、より小さい会社(受託側)に、製造・加工・情報成果物の作成・役務提供などを委託する取引です。
- 手形を渡して支払うこと自体が、一律に禁止されました。
- 電子記録債権(でんさい)や一括決済方式も、法律で決められた支払期日までに全額を現金化できない条件だと、原則として「支払いが遅れている」のと同じ扱いになります。
これは、すべての企業間取引で手形が使えなくなったという意味ではありません。対象になるかどうかは、委託側・受託側それぞれの資本金や従業員数、取引の種類によって決まるため、実際の取引では、その取引が対象かどうかを先に確認する必要があります。
回転日数・CCCへの影響
回転日数とCCCで見たとおり、支払サイト(支払うまでの期間)が長いほど、買う側の会社にとっては運転資本の負担が軽くなります。手形・電子記録債権を使うと、支払サイトを長めに設定しやすくなる一方、受け取る側(売る側)にとっては、代金を受け取るまでの期間が長くなるという側面もあります。ただし、対象取引では、手形を渡すこと自体や、法定の支払期日を超える条件は、取引先との合意があっても認められません。支払サイトを長くする交渉は、まず対象取引かどうかを確認したうえで行う必要があります。
確認問題
- 全国銀行協会「電子記録債権『でんさい』とは」(発行:一般社団法人全国銀行協会/zenginkyo.or.jp/article/tag-j/260//2026年9月確認)-でんさいの仕組み・手形との違いの根拠
- 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(発行:公正取引委員会/jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html/2026年9月確認)-2026年1月1日施行、対象取引での手形払い禁止・電子記録債権の期日現金化原則の根拠
- 対象取引の範囲・具体的な資本金基準等は、事業の実態により異なるため、一次資料または専門家への確認が必要です。