CFO意思決定ラボ
資本コスト(WACC)・投資判断(NPV)・投下資本利益率(ROIC)を、資本配分・取締役会提案という実際のCFOの意思決定の形につなげます。「NPVが最大だから」「ROIC>WACCだから」「現金があるから」という単一指標だけの判断がなぜ不十分かを体験します。
ここで使う資本構成・投資案件・下振れシナリオの数値は、このラボのために新しく設定した架空の学習用ケースであり、他の記事(資本コスト(WACC)とは何か・現金500億円は多すぎるのか?等)で使っている「さくらホールディングス」の正式なケース設定とは別です。両者を混同しないでください。
STEP1|資本コスト(WACC)
本ラボのDebt・Equityは、WACC算定用のウェイトとして市場価値ベースの資本構成を仮定したものです。貸借対照表上の帳簿価額とは区別してください(このDebt+Equityの合計は、後述するROICの投下資本と数値が一致する場合がありますが、意味・算定基礎・入力欄は独立しており、直接合算・流用したものではありません)。また、「税引後負債コスト」は税前の借入金利そのものではありません。下で入力する税前借入金利と税効果計算用税率から、税引後負債コスト=税前借入金利×(1-税効果計算用税率)として計算します。
※現実には、支払利息の損金算入制限(過大支払利子税制等)により、税効果を全額利用できない場合があります。本ラボはこうした制限を考慮せず、税効果を全額利用できる簡略ケースとして扱います。
STEP2|投資案件A・B(NPV)
本ラボでは、投資案件A・Bの事業リスクは、便宜上会社全体の平均的な事業リスクとおおむね同等と仮定し、共通の会社WACCを割引率として一律に適用する簡便法を採用しています。実務では、案件のリスクが会社平均から大きく乖離する場合(新規事業・海外進出・既存事業と異なるリスク特性の案件等)、会社WACCをそのまま一律適用するのは必ずしも適切ではなく、案件固有のリスクを反映した個別の割引率(プロジェクト固有の資本コスト)で評価すべき場合があります。
2つの投資案件について、初期投資とYear1〜5のFCF(各年同額と仮定する簡略化モデル)を、STEP1のWACC(下振れシナリオ適用後の値)を割引率としてNPVを計算します。
STEP3|ROICの位置づけ
ROIC(投下資本利益率)は、会社・事業全体の資本効率を見る診断指標です。個別の投資案件を実行するかどうかは、ROIC>WACCという会社全体の平均像だけで決めるのではなく、その案件自身の将来FCFとNPV(STEP2)で判断します。
WACC用の資本構成とROICの投下資本は、別の数字です。STEP1のDebt・Equityは、あくまでWACC算定用の市場価値ベースの仮定でした。ROICの投下資本は、それとは独立した会計・事業運営ベースの学習用仮定(営業運転資本、有形・無形固定資産等から構成される事業投下資本のイメージ)として、下で別途入力します。「WACC用Debt+Equity=ROICの投下資本」ではありません。
STEP4|資本配分ラボ(通常ケース)
今期配分可能な資金プール(500億円)を、投資案件A・投資案件B・借入返済・現金保持の4つにどう配分するかを決めます。投資案件A・Bは実行するかどうかを選び、借入返済はいくら実行するかを金額で入力します。残りが自動的に現金保持額になります。
| 配分先 | 初期キャッシュアウト | Year1〜5 効果/年 | NPV/評価 | 着眼点 |
|---|
STEP5|下振れシナリオ
投資FCFの下振れ・負債コストの上昇・利用可能な借入枠の縮小を、それぞれ設定できます。組み合わせて適用すると、STEP1〜4のすべてが連動して再計算されます。
STEP6|下振れ後の資本配分の再検討
STEP5の下振れ設定は、上のSTEP1〜4にすでに反映されています。STEP4の投資案件A・Bの実行有無、借入返済額をもう一度見直し、評価がどう変わるかを確認してください。
STEP7|CFO判断のまとめ
単一の「正解」はありません。現在の設定から、採用案・不採用案・追加確認事項を整理します。撤退・再検討条件は、一般的な会計基準・実務慣行として確立した基準ではなく、本ラボ専用の学習用仮定です。
STEP8|取締役会向け最終提案
現在の設定(投資案件A・B、借入返済額、下振れシナリオ)を前提に、取締役会に出す提案を組み立てます。主要な判断は選択式・数値式で行い、自由記述だけで採点不能にならないようにしています。
- 本ラボの数値(資本構成・投資案件・下振れシナリオ・流動性・借入枠の前提)は、実在企業の数値ではなく、WACC・NPV・ROIC・資本配分のつながりを学ぶために新しく設定した架空の学習用ケースです。WACC・NPV・ROICの計算式自体の根拠は、資本コスト(WACC)とは何か・投下資本利益率(ROIC)とは何かの情報源を参照してください。撤退・再検討条件、最低流動性・借入枠の水準は一般的な会計基準・実務慣行として確立した基準ではなく、本ラボ専用の学習用の仮定です。